コラム

舌下免疫療法

2014年10月より、スギ花粉症に対してシダトレンでの舌下免疫療法が開始されました。

当院にては、親しい他の耳鼻科専門医とも相談し、しばらく安全性・効果(有効性)について様子を見ることにしておりましたが、このたび全国的な調査報告で安全性・有効性が確立したことが解り、スギ花粉症に対するシダトレンの舌下免疫療法を開始することとしました。

スギ花粉症に対して約80%の有効率があるようです。ただし、春先のスギ花粉症の季節は治療を開始することができません。
だいたい毎年6月~11月に治療を開始し約3年間の持続が必要と思われます。
スギ花粉症でお悩みの方、薬の減量、休薬を希望される方は是非ご相談ください。

尚、ダニのアレルギーに関しては、もうしばらく安全性有効性について検討していきたいと思います。

なぜ子どもは
カゼをひきやすいのか?

「なぜ子どもはカゼをひきやすいのですか?」という質問をよくお母さんから受けます。

原因の第一は子どもの抵抗力(免疫能)にあります。生後6ヶ月までは、お母さん(母体)からの移行免疫(免疫グロブリン)があり、また母乳に含まれる分泌型IgAも感染防御に役立っています。これが切れる生後6ヶ月以降〜3歳位までは、全身性の免疫機能がまだ確立されていません。したがって、この時期は身体の抵抗力より病原体の方が勝ってしまい感染症をひきおこしやすい状態となります。

第二に病原体の要因があります。病原体としてライノウィルスなどのウィルスや、肺炎球菌、インフルエンザ菌などの細菌によって、まず最初に病原体の入り口である鼻腔、咽喉頭の炎症を起こします。いわゆる急性鼻炎、急性咽喉頭炎に罹患します。この時に耳鼻咽喉科の治療(処置)が必要となります。

第三の要因として、生活環境による影響があります。周囲の者がタバコを吸うと受動喫煙によって気道粘膜の線毛上皮に障害がおこったり、幼稚園や保育園、学校などの集団生活における病原体の易伝染性があります。

これらのカゼにかかりやすい要因がありますが、かかりにくくするためには、個々の免疫能力を高める必要があります。安易な厚着を止め、乾布摩擦などで皮膚を鍛えることも重要と思われます。また運悪くカゼに罹患した場合は、前述しましたように、病原体の侵入路は、鼻腔と口腔からですので、まず最初にハナとノドの治療が重要です。これがこじれると気管支、肺野と炎症がすすみ重篤となる場合があります。うがいなどを励行しながら、まずは耳鼻咽喉科で治療を受け、小児科で重症にならないように診察を受けるのがベストの方法だと思われます。

なぜ子どもは、
急性中耳炎になりやすいのか

「なぜ子どもは、急性中耳炎になりやすいのですか?それにくり返しやすいのですか?」という質問をよくお母さんから聞きます。

第1の要因は、前回も述べましたようにカゼを引くと、上咽頭(鼻の奥)に細菌・ウィルスが溜まりやすくなります。ここに中耳(鼓膜の振動を内耳の神経に伝える空間)と通じている耳管の入口があります。これを通じてウィルスや細菌が中耳腔に感染を起こして腔内で化膿し発熱や痛みを引き起こします。

第2の要因は、体の構造上、子どもの場合大人と比べて、耳管の長さが短く、その傾きが水平に近くなっています。そのためカゼを引いて上咽頭(鼻の奥)で感染を起こした場合、大人と比べて子どもの方が上咽頭から中耳腔にウィルスや細菌が通りやすくなります。また、耳管には、大気圧と中耳腔内の圧の調整をしたり、中耳腔に感染した細菌やウィルスを排除したりするという働きもあります。
一部の子どもでは、これらの耳管機能が悪いために上咽頭に感染した細菌やウィルスで急性中耳炎の発症を何度もくり返す場合があります。

第3の要因として抗生物質の問題があります。一般に急性中耳炎を引き起こす細菌は、肺炎球菌とインフルエンザ菌が多いのですが、これらの細菌に抗生物質が効きにくい症例が増えています。数年前に、あまりにも飲みやすい抗生物質が普及したために、これに対して抵抗力のある細菌、すなわち耐性菌が増えてきています。特にこれらの細菌は、幼稚園や保育園といった集団保育の中で感染が広まっていく可能性があります。

また、最近では、おしゃぶりの使用や、横に寝かせた状態での授乳も中耳炎の原因になるという報告もあります。中耳炎の予防として重要なことは、カゼを引いたら、上咽頭(鼻の奥)の感染源となっている鼻汁の吸引が有効だということです。

花粉症について

花粉症とは、季節性のアレルギー性鼻炎のことです。日本人の約3〜4割の人が罹患しているという報告があり、最近では2〜3才より発症するケースもでてきています。

今の時期の2月上旬〜4月は、1番有名なスギ花粉症を発症します。この後4〜5月になるとヒノキ花粉症、5〜7月になるとカモガヤ、ハルガヤの花粉症、8〜11月になるとブタクサ、ヨモギ、キク科のアキノキリンソウの花粉症の時期となります。結局、寒い冬以外は、なんらかの花粉症が存在することになります。

花粉症とは、これらいろんな花粉が抗原となり、鼻の粘膜で抗体と反応した結果起こるアレルギー性鼻炎(過剰反応)です。体にとって異物である抗原を追い出そうとして、くしゃみや鼻水が過剰に出ます。また抗原が体に吸収されないようにするために粘膜が腫れて鼻閉が起こります。

アレルギー性鼻炎を起こす主なものとして、ハウスダスト(家ゴミ)、ダニ類、カビ類、花粉、動物の毛やフケなどがあります。予防としては、これらの抗原(アレルギー性鼻炎の原因になる物質)が、体内(ハナ、クチ、ノド)に入らないようにマスクなどで防御することが重要です。またうがいで洗い流すことも有効です。

治療法としては、現在最も有効なのが免疫療法(抗原物質を低濃度から除々に上げて注射していく)ですが、稀にアナフィラキシーショックを起こし重篤な状態となる場合がありますので一般の診療所では困難です。

次に有効なのが、初期療法といって、花粉の飛散前1〜2週から抗アレルギー剤の内服や点鼻を開始する方法です。症状が出てからよりも、より有効な方法との報告があります。

また、症状に沿った治療が必要です。例えば鼻づまりがひどい場合は、レーザー治療を併用するとか、鼻閉により効果のある薬を服用するとか、専門医によく相談してください。

近年、「舌下免疫療法」という治療法がありますが、こちらはスギ花粉症の新たな治療法として期待されています。スギ花粉のエキスを舌下から取り入れる治療法で、ご自宅でも行えます。ただし、あくまでもスギ花粉アレルギーの方のみです。

花粉症の皆様、実は私も花粉症ですが、この時期をきちんと治療し、快適に過ごせるようにしましょう。